デュークが見た!2007釜山アジア短編映画祭

本当の映画好きは見逃せない、若き映画人のタレント・キャラバン!

アンニョンハセヨ!デューク松本です。街はシネコン建設ラッシュ、釜山国際映画祭(通称:PIFF)の専用施設も遂に着工して、日本からはキムタクが映画ロケするなど、ますます映画がホットな釜山の街。やっぱり釜山といえば毎年秋に開催されるアジア圏最大のPIFFが外せませんが、短編映画(ショートフィルム)の世界でもアジアを代表する映画祭があります。それが今回ご紹介する『釜山アジア短編映画祭』(通称:BASFF)。その名の通り、アジアを中心とした世界中のショートフィルムを紹介する映画祭です。プサンナビではこの若き才能に溢れ、熱いボランティア諸君に支えられたBASFFを昨年に引き続き突撃取材、ここでご紹介します。
BASFFって?
その歴史はPIFFよりも古く、母体となった「韓国短編映画祭」の開催は1980年代。これは韓国初の短編映画祭で、最初は映像系の学生や一般のインディー映画監督が自前の8mmフィルムを持ち寄っての上映会といった感じだったとか。その後、回を重ねるにつれ、その認知度や未来の映画監督を輩出という意義が注目・重要視され、1997年に「釜山短編映画祭」、2000年に現在の「釜山アジア短編映画祭」と改称、規模が大きくなっただけでなく、アジア圏の多様な若い映画監督の作品の発表と発掘、支援の場として確固たる地位を築いているのです。コンペティションを有すのも特徴で、前回は日本からの作品『ドロン』(平林勇監督)がグランプリを獲得し話題となりました。
今年は5月16日(水)~19日(土)に開催されたBASFF。好天にも恵まれました。会場は恒例の慶星大学校キャンパス。同校名物の門から伸びる急な坂道には順路を意味するポスターが矢印形に張られています。早速の手作り感が微笑ましいです。その矢印を追っていくと、メイン会場である学内コンサートホールに辿り着きます。その前の広場では映画祭横断幕が張ってあったり、グッズ販売兼インフォメーション・ブースが特設されていたりと賑やかしは施されていますが、大学キャンパスだけあってどこかゆったりと落ち着いた感じ。早速、スタッフの学生ボランティアの案内で今回のBASFFに参加!
今回の上映作品は13ヶ国、79作品。一本が5?50分と短いので、20のグループに分けて、連続して上映されます。1回の上映は約90?120分。グループによっては上映終了後、監督によるティーチインが行われます。今回は特別企画としてアメリカ作品を集めたカテゴリー『The World, Irreversible』、スペインの『サン・セバスチャン映画祭』特選集、『ベルギー・アニメーション』特集、『パリ国際短編映画祭』特集が上映されました。

参加国:韓国、日本、中国、台湾、タイ、シンガポール、イラン、イスラエル、(アメリカ、スペイン、ベルギー、フランス、フィンランド)

※カッコ内は特別企画

今年の特徴は韓国作品が圧倒的に多いこと、30?50分の力作が目立ったこと、ジャンルはコメディ、ドラマ、ホラー、アニメーション、前衛作、ドキュメンタリーなどバリエーションは相変わらず豊富ですが、人間ドラマと社会ドラマに注目が集まった年でした。日本からの参加は2本、前回のグランプリ受賞監督・平林勇さんの新作『A story constructed of 17 pieces of space 1 moggot』と今回が3回目の参加となる村松亮太郎監督の『Anti Sex』。どちらも大変好評でしたが、後者は監督自身がティーチインに参加し、大いに盛り上がりました。
最終日である19日(土)にはメインホールで閉幕式が催されました。上映作品の中からコンペティション優勝作品と下位賞、審査員団による審査員特別賞、そして観客の人気投票による観客賞が選ばれ表彰されます。受賞者には賞金とスポンサー景品として韓国富士フィルムより35mmフィルムが進呈されます。満員の会場の中には来賓には昨年の司会だった韓国で有名な個性派俳優オ・グァンノクさんの顔も。そして今回の審査員には日本よりアジアフォーカス福岡映画祭の新ディレクターである梁木靖弘さんも参加しています。
さて、いよいよ開幕です。各賞が発表され、壇上で授賞後それぞれ喜びのスピーチを披露していきます。ここでは、その全受賞作品をご紹介します。

ドンバック賞(グランプリ)
[賞金1000万ウォン+賞品35mmフィルム4000フィート]
『Graceland』
タイ Anocha Suwichakornpong監督 17分37秒 35mm

解説:エルビス・プレスリー似の歌手がバンコクで謎の女性と知り合い、見果てぬ地までドライブする奇妙な一夜。
ルノー・サムソン賞
[賞金400万ウォン+賞品35mmフィルム3000フィート]
『The Ordinary People』
韓国 LEE Yu-Rim監督 28分5秒 HD

解説:レイオフ反対で共に戦った青年労働者たちとひとり会社に戻るように言われた青年の葛藤。
教保生命賞
[賞金300万ウォン+賞品35mmフィルム3000フィート]
『One Day To Be Passing By』
韓国 Kim Yang-Hee監督 19分14秒 DV

解説:自殺願望がある少女と友人の少女の心の交流と成長を描く。
MINSOBG賞
[賞金300万ウォン]
『Fruit Of Olive Tree』
イラン Misa Molavi監督 6分 DV
富士フィルム賞
[賞品35mmフィルム8000フィート]
『Three Important Components For Rock Roll』
韓国 Jung Byoung-Gil監督 28分28秒 DV ドキュメンタリー
審査員特別賞
[35mmフィルム2000フィート]
『You Will Know』
韓国 Kim Young-Jae監督 21分35秒 35mm
観客賞
[35mmフィルム2000フィート]
『She Was My Brothers Ex-Girlfriend』
韓国 Kim Sun-A監督 24分30秒 HD
なんと今回の受賞者のほとんどが女流監督でした!
上映が終わり会場の外へ出ると、ボランティア・スタッフが撤収作業を終え総出で観客を出迎えてました。そうBASFFはPIFF同様、献身的なボランティア・スタッフに支えられているんですね。彼らは主に慶星大の学生で、一部シニア・スタッフの顔ぶれも見受けられます。彼らの仕事は多岐で、観客やゲストのお世話をはじめ、広報や通訳・翻訳、記録映画の作成から映画祭ホームページの制作までなんでもこなします。彼らの献身的な働きが映画祭の屋台骨を支えているんですね。皆、4日間のハードスケジュールを終え、安堵とともに充実感に満ちた様子でした。オツカレさま!
今回は学内の食堂が祝宴会場となって、ゲストもスタッフも皆で食事を介しコミュニケーションを楽しみました。その会場で村松亮太郎監督のお姿を発見!ちょっと話を伺ってみました。
『実は今回出展は3回目なんです。世界中の映画祭に参加しますが、BASFFはあらゆる意味でAクラスなんですよ。献身的なボランティアの存在も欠かせないし、映画祭の存在も大きい。そのバランスがいいんですね。逆にそれが悪い映画祭の方が多いから、僕の中ではポイントが高いんです。また、是非参加したいと思っています。』
いかがでしたか?日本でも各地で大小の短編映画祭が催されていますが、BASFFは映画の街・釜山ならではの賑やかでハートが熱い楽しいイベントでした。期間中、ボランティア・スタッフによるバンド演奏なんかもありました(なんと、ハードコア・ロック!)。そうです、BASFFは制作者同士や観客との距離が最も近い映画祭で、まさにその交流の場。そして日本からはその立地と趣旨からいっても最も身近な海外の映画祭といえるでしょう。来年この時期に釜山に来たら是非参加してみてください。そして映像作家の方はドシドシ参加してみて下さい。映画好きならではのお祭りで、若いエネルギーに刺激を受けること間違いなし。来年もどんな楽しいイベントになるか楽しみでです。以上、デューク松本がお届けしました。
<2007釜山アジア短編映画祭>
日程: 2007年5月16日~19日(4日間)
会場: 慶星大学校コンサートホール、小劇場、マルチメディア小講堂、教室、釜慶大学校会場(全5館) 主催 : 韓国映画人協会釜山支会、釜山映像委員会
主観: 釜山アジア短編映画祭実行委員会
後援: 釜山広域市、釜山国際映画祭、シネマテック釜山、慶星大学校、釜山銀行、他 スクリーニング数:39回
ボランティア数: 55人(事前発表)
公式サイト: http://basff.org/ (韓国語/英語)

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2007-05-23

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