K・F・Cの市場探訪~亀浦市場編!

驚きの連続、ないものはない亀浦市場!

アンニョンハセヨ、K・F・Cです。K・F・Cは韓国の市場を訪ねるのが大好きです。そんなK・F・Cが韓国の市場に潜入し、あれやこれやとのぞいてまわる市場探検シリーズも今回で4回目。チャガルチ市場、釜田市場、巨済島の市場とまわり、今回は亀浦市場(クポシジャン)というところに行ってきました。亀浦市場は、釜山の中でもかなりディープな市場として知られています。今回の市場探検は、まさに驚きの連続。市場のパワーに圧倒されないよう、気合を入れて探検してきました。
亀浦市場とは
亀浦市場は、地下鉄2号線の徳川(トクチョン)駅と亀明(クミョン)駅の間に位置する在来市場。正確には、鮮魚区、穀物区という2つの建物に入る店舗をさして亀浦市場と呼びますが、一般的にはその周辺で営業する露店なども含めて亀浦市場と呼ぶことが多いようです。3と8のつく日には大市が開催され、1万人もの人を集める巨大市場に変身。歴史も古く、文献上のもっとも古い記録は1871年までさかのぼるとのことです。

亀浦市場への行き方
 亀浦市場へは地下鉄2号線の徳川駅が最寄駅になります。駅からは徒歩5分程度の距離。地下鉄の階段をあがり、大通りを亀明駅方面に歩くと、右側に巨大な市場があらわれます。とにかく巨大な市場なので、どの路地から入っても大丈夫。方角さえ頭に入れておけば、足の向くままに歩いても充分に到着できます。

第一印象、ないものはない市場
市場に着いての第一印象は、とにかくないものがないという感じ。生活に必要なものがすべて揃っている市場です。野菜、果物、魚、肉、惣菜などの食料品から、日用雑貨、衣料品、化粧品、娯楽用品に至るまで。ありとあらゆる商品が混在しています。面白いのは、商品の種類によって明確なエリア分けがなされていないこと。もちろん、ある程度の目安はあるのでしょうが、ざっと見た感じではほとんどごった煮状態です。果物を売る店のとなりに衣料品店があり、その横では観葉植物を売っている。次になんの店が飛び出してくるのか、まったく予想できない楽しさがあります。
淡水魚が勢ぞろい!
 釜山は韓国一の港町。チャガルチ市場をはじめ、どの市場に行っても新鮮な海産物が豊富に並んでいます。もちろんこの亀浦市場も例外ではないのですが、ここは海に近いだけでなく、すぐ近くに洛東江(ナクトンガン)という大きな川が流れています。そのため、市場には普段なかなか見られない淡水魚がいっぱい。フナ、コイ、ウナギ、ナマズ、ライギョ、ドジョウ、食用ガエル……。海水魚に比べて地味なイメージがある淡水魚ですが、これだけならぶとやはり壮観です。
これらの淡水魚はメウンタン(魚を煮込んだ辛い鍋料理)にして食べるのが一般的。淡水魚特有の泥臭さを消すには、唐辛子、ニンニクなどの香辛料をたっぷりきかせて煮込むメウンタンが最適とのことです。
こちらの青緑色した貝の名前はタスルギ。日本語ではカワニナと呼ばれています。忠清道を中心に、韓国全土で食べられている代表的な淡水貝で、この貝のスープは二日酔いによくきくといいます。地方によってたくさんの別名があり、忠清道ではオルケンイ、慶尚道ではコディ、安東をはじめとした慶尚道北部ではコルブリと呼ばれています。
緑の多い市場?
 亀浦市場の特徴なのか、それとも時期的なものなのか、観葉植物を扱う店が目立っていました。こちらのおばちゃんが扱っていたのは、観賞用のサボテンと、最近人気だというサンセベリア。部屋に飾っておくと、空気をきれいにしてくれるのだとか。値段は2つで3000ウォン。こんなの市場で売れるのかなあ……と横から疑いの目で眺めていたのですが、意外にもすごい勢いで売れていました。うむむ、失礼しました。
食欲も満たしてくれます!
巨大な市場だけあって、食事スペースも充実しています。新鮮な魚をその場で刺身にして食べさせてくれるお店から、カルグクス、ピビンパプなどの軽食類を食べさせてくれるお店。そのほか、スンデ、ティギム、キンパプなど、代表的な屋台料理もつまめるので、ちょっとしたおやつがわりに寄ってみるのもいいかもしれません。
K・F・Cよりとても重要なお知らせ
 さて、ここでちょっと休憩。K・F・Cのほうから、とても大事なお知らせがあります。ここから先をお読み頂くために、どうしてもお伝えしておかなければならないことがひとつ。申し訳ありませんが、ちょっとの間だけお付き合いください。

 実は、この亀浦市場。これまで「何でもある巨大な市場」という部分をアピールしてきましたが、もうひとつ、たいへんに特徴的な一面をもっています。

それは、獣鳥肉を専門的に扱うエリアがあるということ。
具体的に言うと、黒ヤギ、ウサギ、地鶏、アヒルなどの動物が、檻に入って売られている市場ということです。そして、これらの動物が売られているということは、当然のごとくあの動物も売られています。そう、犬です。
 韓国では犬を食べます。牛、豚、鶏などを食べるのと同じように、ごくごく当たり前のこととして古くから犬を食べてきました。今でも普通に食べられており、特にポシンタンと呼ばれる犬肉の鍋は、夏バテを防ぐスタミナ料理として高い人気を誇っています。
 ただし、犬肉を食べることについては、韓国国内でも抵抗を感じる人が多く、賛否両論あるというのが現状です。世界に誇るべき食文化なのか、はたまた忌むべき悪習なのか。オリンピックやワールドカップなど、韓国で大きな国際大会などが開催されるたびにその是非が問われ、国際問題にも発展しました。ある種、タブーのように扱われてきた食文化のひとつです。
 従って、外国人観光客の行くような大きな市場では、まず犬肉を見かけることはありません。豚の頭がそのまま置かれていることはあっても、犬肉が販売されている光景というのは、まず見られないはずです。
 亀浦市場は、そうやってタブーのように扱われている獣鳥肉の流通を、直接見学することのできる貴重な場所です。よい、悪いの意見を越えて、韓国の食文化の一端を真正面から見ることができる場所。そういった観点から、今回の取材地に選定いたしました。これより先、K・F・Cの市場探検は、獣鳥肉を販売するエリアに踏み入ることになります。人によっては、嫌悪感を抱く方もいるかもしれません。そういう方は、ここで読むのをやめて頂いてもかまいません。正直、けっこうエグい話になります。そのあたりをきちんと踏まえた上で、読み進んで頂ければと思います。
僕らが食べる動物たち
 獣鳥肉を専門に扱うエリアへと入ってきました。あちこちから、いろいろな動物の鳴き声が聞こえてきます。まず目に入ったのが黒ヤギ。黒ヤギ料理は釜山名物のひとつで、金井山のほうに行くと専門店がたくさんあります。黒ヤギの焼肉、黒ヤギのプルコギなどが代表的な食べ方です。
鶏は檻の中だけでなく、檻の上にも乗ってバサバサと羽を振り回していました。赤系の羽をしているのが韓国の地鶏、黒い羽は烏骨鶏、白い羽はアヒルです。これらの鶏は滋養強壮の効果が抜群。特に、烏骨鶏で作ったサムゲタン(オゴルゲタン)は薬効が高く、体力増強や疲労回復、また産後の回復にも効果があるそうです。

あまりにも日常的な犬肉販売の光景
 そしていよいよ犬の登場です。道の両側で、檻に入れられた犬が吠えています。その横には、すでに解体された犬肉も並んでいます。鮮度を示すためか、四肢が残されたまま内臓をむき出しにして並べられています。覚悟はしてきたものの、やはりずいぶん圧倒される光景。すぐ横で吠えている犬と、解体されて店頭に並んでいる犬。その感覚的なギャップを頭の中で埋められません。
 ここではそんな風景こそが、ごくごくあたりまえの日常。スーパーで羽をむしられた丸鶏が売られているのと同じように、ここでは皮をはいだ「丸犬」が売られているというだけのことです。ふとみると、店頭に陳列されている犬のお腹に、ちょこんと蚊取り線香が置かれていました。どうやら単純に虫除けの用途でおかれている模様です。犬肉と蚊取り線香。このあまりにもかけ離れた組み合わせが、妙に日常的であることを主張しているように思えます。

市場の方はみな親切でした
 興味本位で行くと怒られるのではないか……という心配もあったのですが、市場の人たちはみなとても親切でした。見学に来た旨を伝えると「おお、そうか。どんどん見て行きなさい」と言われたくらい。質問にも丁寧に答えてくれました。シーズンである夏はやっぱり忙しいということ。部位別でも販売するが、たいていの人たちは1頭ずつ購入していくということ。値段は小さい犬で1頭5万ウォン程度。大きい犬で12万ウォン程度だということ。などなど、いろいろ教えて頂きました。
ただ1点、写真撮影の許可だけは頂けませんでした。写真がどこかに出回り、マイナスのイメージで使われた場合、最終的に生活の糧を失うことにもなりかねないからでしょう。食文化の一部とはいえ、獣肉販売の現状は非常に厳しいものがあります。
というわけで、許可を頂けなかった場所の写真はありません。文章だけの報告ということでご容赦ください。

ポシンタンを食べに
 話を聞かせてくれた市場の方が、おいしいポシンタンを食べさせてくれる店というのを紹介してくれました。犬肉を売っているエリアのすぐ真向かいが、そのおすすめの店。目の前が市場なのですから、鮮度は抜群とのことです。なるほど。それは、その通りですよね。
たくさんの犬を見た後で、すぐ犬肉料理を食べに行くというのも悪趣味な話ですが、逆に流通されるさまを見ておいて、食べるところだけ顔を背けるというは、もっと失礼な気がします。食文化の一端を見学するというのなら、きちんと最後まで責任を取らねばならない。そう考えて、ポシンタンを食べに行って来ました。
注文して出てきたのが、このポシンタンです。犬肉には多少の臭みが残るため、エゴマの実や、唐辛子をたっぷり入れて煮込みます。ぐつぐつと煮え立って、いかにもおいしそうですよね。スプーンを手にとって、いざ突撃。と、思った瞬間。K・F・C、あることに気付いてしまいました。
ま、窓の外から、犬の鳴き声が聴こえます……。
 なんとも複雑。さきほどまで見てきた犬の顔が、目の前にチラついてきました。これが鶏だったら気にならないのか。あるいは豚だったらどうなのか。魚の活け造りなら大丈夫なのか。牛の鳴き声なら……。もろもろの考えが頭の中を駆け巡ります。どんな生き物を食べるのも人間の原罪としては同じなのですが、なんていうか、これはもう理屈ではありません。ポシンタンそのものはとてもおいしかったのですが、やはり胸中穏やかでなく、7~8割方食べたものの少し残してしまいました。

亀浦市場の見学を終えて
 亀浦市場を、少し放心したような気分で出ました。よい経験をしましたし、よい勉強をさせてもらいました。色々考えさせられることも多かったです。普段、何気なく食べているものを、1度客観的に見つめなおす機会をもらったような気がします。
 ただ、個人的には、亀浦市場の観光はあまりおすすめしません。よい経験にはなることは確かですが、頭では理解しているつもりでも、直接見てしまうとショッキングなことというのがあります。もし行かれるのであれば、きちんと気持ちの準備をしてから行ってください。また、あからさまな興味本位も避けて頂ければと思います。特に、断りなしの写真撮影は絶対にやめてください。それが最低限のマナーです。以上、K・F・Cでした。

K・F・Cからのお願い
市場で商品の写真を撮る場合は一声かけるのがマナーです。きちんと許可をもらってから撮るようにしましょう。また人の写真を撮る場合も同様です。突然カメラを向けられたら誰でもいい気持ちはしません。マナーを守って観光をしましょう。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2004-08-27

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