K・F・Cの釜山を食べ尽くそう 第2弾(釜山)

金井山にのぼれ、黒ヤギとマッコルリが待っている!

アンニョンハセヨ、K・F・Cです。釜山のおいしいものを求めて食べ歩く、釜山を食べ尽くそう企画の第2弾。今回は、釜山の隠れた名物として名高い、黒ヤギ料理を食べに行ってまいりました。韓国最大の港町として知られ、海産物がおいしいことで有名な釜山ですが、「釜山」という名がしめす通り、周りは「山」に囲まれています。海岸沿いをちょっと離れて山に足を踏み入れると、そこにはまた違う食文化が。チャガルチ市場で食べる刺身の大盤振る舞いだけが釜山の味覚ではありません。海の幸、山の幸の両方が楽しめるのが、釜山の素晴らしいところなのです!
ナビけんさんによる魅惑的なお誘い
ナビけんさん:「K・F・Cさん。釜山名物の黒ヤギ料理は食べたことがありますか?」
K・F・Cさん:「いや、話には聞いていましたが、まだ食べたことはないですね」
ナビけんさん:「おお、そうですか。では、この機会にぜひ1度いかがでしょう」
K・F・Cさん:「いいですねえ。黒ヤギはどこで食べられるんですか?」
ナビけんさん:「金井山にのぼって、3時間ほど歩いた山間の村で出しているようです」
K・F・Cさん:「ほー。3時間も歩いて行くようなところですか」
ナビけんさん:「ええ、でも行く価値はあるということですよ」
K・F・Cさん:「なるほど。面白いかもしれませんね」
ナビけんさん:「行きますか」
K・F・Cさん:「行きましょう」
??:「うん、行こう行こう」
ん!? ところであんた誰?
横から「うん、行こう行こう」と、口を挟んできた男性。彼はK・F・Cの友人で、ヨングク兄といいます。日本での留学を終え、地元である釜山に帰ってきたばかり。K・F・Cが釜山に来たということで、わざわざ会いにきてくれました。

釜山をもっともよく知る日本人であるナビけんさんに加え、釜山が地元のヨングク兄が加われば道案内も完璧。話は一気にまとまり、3人パーティで山登りをすることになりました。

「んじゃ、ヨングク兄さん。道案内よろしくね」
「おう、まかせとけ。釜山のことなら知らないことは何もないぜ」
「おおー、頼もしいっすね」
「ふ、釜山のヨン様と呼んでくれい」
「…………」
黒ヤギを目指す入念なるコース選定
釜山通のナビけんさんと、釜山地元のヨングク兄がコース選定会議を行います。目的地となるのは、金井山の中腹にあるサンソンマウル(サンソン=山城、マウル=村)という村。この村へ行くには、いくつかのルートがあるのですが、今回は梵魚寺(ポモサ)からスタートし、金井山を囲む城壁沿いに北門、東門と経て、サンソンマウルに向かうことに決定しました。金井山は外敵からの攻撃を防ぐために作られた山城跡でもあり、長さ17kmを越える城壁は、国内最大規模のものとして文化財に指定されています。ルートについては地図をご参照ください。
01:27 梵魚寺入口よりスタート!
元気よく梵魚寺よりスタート。梵魚寺は新羅時代に創建された由緒あるお寺。お寺を見学するとともに、登山の無事を願ってお祈りをしていきます。梵魚寺までは地下鉄1号線梵魚寺駅から、バスに乗って10分ほど。駅近くのバスターミナルより90番のバスに乗ってください。
01:57 梵魚寺を出発(梵魚寺→北門 1.6km)
梵魚寺の大雄殿から左手方向に抜けていくと、そこが北門へ向かう登山道の入口。ちょうど地図があったので、それを見ながらヨングク兄が今日のルートを説明してくれます。

「今ここね。ここからずっと上がって行くとまず北門に着く。そうしたら、後は城壁に沿って東門まで歩いて、あとはサンソンマウルまで降りるだけ」
「ふーん。要はひたすら城壁沿いを歩くってことね」
「うん、そう」
「サンソンマウルまではどのくらいかかるの?」
「うーん、俺も中学生くらいの頃に来て以来だからな。道もよく覚えてないし……。ま、行けばわかるでしょ」
「…………」
って、あんた自信たっぷりに「釜山のことなら知らないことは何もない」とか、豪語しておりませんでしたか? いきなりなんとも不安な道案内ですが、ともかく気を取り直して出発いたします。梵魚寺を出発して最初は急なのぼり坂。岩のゴツゴツした道を、よいしょよいしょとのぼっていきます。
「大変なのは最初だけだから頑張ろうね。北門からは尾根で楽になるから」
「おーし、頑張るぞ!」
と、元気がよかったのは最初の10分だけ。日頃の運動不足がたたり、ワタクシあっという間にバテました。息はゼイゼイ、足元フラフラ。カメラマン役であるナビけんさんの、「それではこのへんで登山写真を1枚」の声にも目が笑っていません。うつろな目つきで約30分、ヨロヨロと這うようにして坂をのぼります。
02:36 北門着(北門→第4望楼 1.6km)
出発から30分。ようやく最初の目的地である北門に到着です。これでようやく行程の3分の1程度ですが、この時点でもう充分満足した感があります。
「んじゃ、ナビけんさん。そろそろ下山しましょうか。企画を梵魚寺から北門を目指せっていう感じにさくっと変更して……」
「それだと黒ヤギが食べられなくなりますよ」

そ、そうだった。山歩きはしんどいが、黒ヤギは食べたい。やむなく10分の休憩ののち、再びヨロヨロと歩き始めます。

「黒ヤギ、黒ヤギ、黒ヤギ……」

ゴールの黒ヤギを頭に浮かべつつ、1歩1歩山道を歩いていきます。ん、そういえばこんな状況、いつぞやもあったような気が……。
03:24 第4望楼着(第4望楼→東門 2.4km)
北門から次の中継ポイントである第4望楼までは、城壁沿いに尾根を歩きます。北門までの急坂に比べればはるかに楽な道のり。快調なペースで歩くことができました。道の途中にオデンの露店が出ていたので、ちょっとだけ栄養補給。山の上で食べるオデンの味というのも、爽快感あふれていいものです。値段は1本 500ウォン。山の上だけに、町より200ウォン高い値段でした。
ちなみに、この北門から第4望楼を経て東門までの道のりは、右手も左手も非常に眺めがいいところです。ヨングク兄が尾根から見える景色を説明してくれました。
「右手に流れているのが洛東江(ナットンガン)。左手に見えるのは地下鉄1号線沿いにのびる釜山の町。奥には広安大橋も見えるね」
04:05 東門着(東門→サンソンマウル 0.6km)
第4望楼から東門までの道は、なだらかな下りが多く楽な道のりでした。最後の松林を抜けると、そこが東門。北門よりもはるかに立派な門がそびえ立っていました。いよいよ、山歩きもここでおしまい。東門を背にするかたちで、進行方向右手におりていきます。
下山の途中で、飼われている地鶏を発見。周囲にも地鶏料理を出す店が、看板を出しています。サンソンマウルは黒ヤギでも有名ですが、そのほか、地鶏、アヒル、烏骨鶏、イノシシなどの料理も食べることができます。ウナギ、ナマズなど、淡水魚の料理を看板に掲げる店も多かったですね。全般的にスタミナのつきそうな料理が多く目につきました。
04:25 サンソンマウル着
道路がアスファルトに覆われ、いよいよ目的地のサンソンマウルに到着。梵魚寺を出発してから約2時間半。いい運動にもなって、おなかもペコペコです。あとは黒ヤギ料理を目指すだけ。お店はプサンナビに紹介されているユデガムをチョイスしました。
04:35 黒ヤギ料理店着
さあ、さあ、さあ、さあ、やってきましたよ。本日のメイン、黒ヤギ料理をモリモリ食べる時間です。バクバク食べる時間です。ワシワシ食べる時間です。マッコルリをグビグビ飲んで、至福の世界にどっぷりと浸る時間です。席に座るなり、黒ヤギとマッコルリを注文。続いて、地鶏のペクスク(丸鶏を漢方食材と水煮した料理)と、トトリムク(ドングリの粉を固めたもの)も頼んでみました。
最初に運ばれてきたのはトトリムク。ドングリの粉をゼリー状に固めたもので、プリプリとした食感が魅力の料理です。トトリムクそのものは味がほとんどないので、たっぷりの生野菜と一緒に和えてサラダのように食べます。キュウリ、ニンジン、細ネギ、白菜、サンチュ、タマネギ、赤と青のトウガラシ。疲れた身体に、野菜のみずみずしさがなんとも嬉しいです。
トトリムクをつまみながらマッコルリをぐいぐい飲んでいると、店の人からこんな嬉しいお声がかかりました。
「これから黒ヤギを焼きますけど、ごらんになりますか?」

見ます、見ます、見ます、見ます。調理風景を見られるなんて、そんな貴重な体験はありません。すぐさま席を立って、お店のおばちゃんについて行きます。黒ヤギは煙をもくもく立てながら炭火で焼くのが味の秘訣とのこと。厨房では煙だらけになってしまうので、店の外に焼き場が設けてありました。パタンとたためるようになった網を使い、両側からまんべんなく焼いていきます。
黒ヤギが焼けるまでの間、お店のおばちゃんに質問タイム。以下、一問一答です。

Q、黒ヤギには下味をつけておくのですか?
A、醤油、砂糖、料理酒、コショウ、ニンニクなどで下味をつけておきます。

Q、黒ヤギの肉はどこの部位を使用するのですか?
A、牛肉のようにカルビ、ロースなどと部位がわかれているのではなく、いろいろな部分を混ぜて使用しています。

Q、黒ヤギの魅力はどのあたりにありますか?
A、脂肪が少ないので、子どもから老人までみんなで食べることができます。薬用としての効果も高く、特に女性の産後回復にいいと言われています。

そんな話をしているうちに、黒ヤギがジュウジュウと焼きあがりました。熱いうちに食べないとおいしくないということで、あわてて席のほうに戻ります。さあ、念願の黒ヤギですよ! 下味がついているので箸でがばっと取って、そのまま口の中に放り込みます。
ん、ん、ん、ん、ん、う、うまーい! 
これは、本当にうまい! 山登りで苦労したことも含めて、たまらないうまさです。まず鼻に抜けていくのは、炭火のいい香り。肉質はシコシコとして、牛や豚よりもちょっと固い感じですが、噛むほどに旨みがにじみ出てくるので嫌な固さではありません。むしろ、歯触りと味をダブルで楽しめるといった感じです。そして、この黒ヤギを食べた直後にマッコルリを飲むと、また最高。黒ヤギ、マッコルリ、黒ヤギ、マッコルリの連続で、あっという間に皿をすっからかんにしてしまいました。
ああ、もっとゆっくり味わって食べればよかった。そんな後悔とともに、いじきたなく皿を箸でつついていると、次の喜び、地鶏のペクスクが運ばれてきました。
丸鶏1匹が食卓にどーん! この迫力はたまらないものがあります。さっそく箸を突き立ててみると、ほろり、はらりと身がほぐれ、骨もストンと抜ける柔らかさ。粗塩をちょっとつけて食べると、皮目の脂がとろとろと溶けていきます。身もしっとりと柔らかく、かといってぐずぐずに崩れているわけでもありません。一緒に煮込まれた朝鮮人参、ニンニク、ナツメまで、すべておいしく頂きました。残るは骨ばかりなり、です。
06:30 バス乗車
いやあ、満腹。幸せいっぱい。満面の笑顔になって店を出ます。すっかり酔っ払ってしまいましたが、よく考えるとここからどうやって帰ればいいのかわかりません。もう1度、あの山道を通って帰るにはちょっと酔っ払いすぎているのですが……。
K・F・Cさん:「あの、ナビけんさん。ここからはどうやって帰ればいいんですか?」
ナビけんさん:「バスがありますよ。203番のバスに乗れば温泉場駅まで行ってくれます」
K・F・Cさん「え、バス? それって、やっぱり温泉場駅とここを往復しているバスですか?」
ナビけんさん:「ええ、もちろん」
K・F・Cさん「ということは、わざわざ山登りをしなくても、バスに乗ればここまで楽に来られたっていうことですよね」
ナビけんさん:「はい、そうです」
K・F・Cさん「…………」
バスで来られるところを、わざわざ山登りまでして遠回り。この苦い感覚は、どこかで経験したことがある気がします。どこかで、どこかで、どこかで……。
K・F・Cさん「ああっ、これは慶州ナビの南山登山と同じパターンだ!」
その瞬間、過去の忌まわしき記憶が一気に蘇ってきました。あれは2002年の秋。慶州ナビの策略にはまり、バスで行けるはずの店までわざわざ山ひとつ越えて行かされたのです。慶州ナビとしては山登りの取材がしたいだけ。うまい料理をエサに、K・F・Cを山登りにつきあわせたのでした。
ナビけんさん:「ええ、慶州ナビの話を参考にしました」
K・F・Cさん「…………」
ナビけんさん:「前々からこの金井山をアピールしたかったんですよね」
K・F・Cさん「…………」
ナビけんさん:「おかげでいい記事になりそうです」
K・F・Cさん「ま、また騙された……」
06:51 地下鉄1号線温泉場駅着
サンソンマウルのバス停から、地下鉄1号線の温泉場駅まではわずか20分の道のりでした。サンソンマウルから温泉場駅に向かうバスは1時間に3本。毎時、 10分、30分、50分に出発するとのことです。バス停の位置はユデガムから、東門方向にちょっと道を戻ったところにあります。
これにて、黒ヤギ料理を目指した金井山登山は終了。わざわざ3時間も歩くことなく、20分バスに乗るだけで食べることができますので、みなさんぜひサンソンマウルまで足を運んでみてください。K・F・Cは騙されて連れて行かれたため悔しい気持ちでいっぱいですが、金井山もとてもいいところです。ちょっとしたハイキング気分で楽しめて、最後は黒ヤギ料理まで楽しめてしまう。時間と体力に余裕のある方には、ぜひともおすすめしたいコースです。以上、K・F・Cでした。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2005-03-31

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