K・F・Cの巨済島を食べ尽くそう(釜山)

ヒラメ絶品フグ最高、巨済島を120%食べてきました!

アンニョンハセヨ、K・F・Cです。釜山を脱出して、巨済島(コジェド)まで行ってきました。巨済島とは釜山からフェリーでわずか45分というところにある島のこと。済州島(チェジュド)よりも気軽に行けて、しかも釜山とはまた違った文化を楽しめるというのが魅力です。そして巨済島にはおいしいものがたくさんあるのです。どうせ行くならば徹底的においしいものを食べてこよう。ということで、巨済島を食べ尽くす旅に出かけてきました。
キミはなぜ巨済島を目指すのかという前置き
今回巨済島を目指した理由はふたつありました。ひとつは巨済島に住む友人を訪ねること。あとでまた改めて紹介いたしますが、その友人が「巨済島までうまい刺身を食べに来い」と誘ってくれたのです。巨済島は島だけあって、海からの恵みが豊富。酒でもくみかわしながら、うまい刺身に舌鼓を打とうという考えです。

そしてもうひとつの理由が市場探検をしようということ。食文化の豊富な土地には、必ずといっていいほど魅力的な市場があるものです。そんな巨済島の市場をくまなく探検し、「K・F・Cの市場探検 巨済島編」を書こうではないかという作戦です。

かくして、お友達と会ってうまい刺身を食べる、市場を探検してうまいものを探す、という2段構えの旅が始まることとなりました。そして最後にもう1点。これはオマケなのですが、今回の市場探検にはテレビの取材がくっついていました。実はK・F・C、8月の半ば頃に韓国のテレビ番組に登場する予定です。韓国文化を日本に伝える日本人として、とあるドキュメンタリー番組に出演したのですが、その撮影の一部にこの巨済島市場探検が含まれていました。そういったわけで、今回の写真には端々にカメラやスタッフの姿が写り込んでおり、カメラとカメラがぶつかり合うちょっと不思議な写真になっております。申し訳ありませんが、そのあたりのことをご容赦ください。

前置きが長くなりました。それでは巨済島を食べ尽くす旅に出かけましょう。
さらば釜山よ、また会おう!
巨済島行きのフェリーは南浦洞(ナンポドン)駅から歩いて5分の沿岸旅客ターミナルから出ています。早速チケットカウンターで、長承浦行きのチケットを買いました。金額は片道1万6000ウォン。なお料金、時刻表などについては下のページをご参照ください。
チケットを買ってフェリーに乗り込めば、あとはのんびり45分待つだけ。目になじんだ釜山の景色がだんだん遠のいていきます。「じゃあねえ」なんて影島大橋に手を振ったりなんかして。いかにも余裕の表情ですが、デッキは風も強くかなりの揺れです。落ちないように必死というのが正直なところでした。
注意:通常フェリーのデッキには出ることができません。撮影の都合上、特別に許可を取って外に出ましたが、はっきりいって危険です。風にあおられて吹っ飛ぶかと思いました。

着いた着いた巨済島に着いた!
巨済島到着。船酔いを少し心配したのですが、天気もよくさほどの揺れではありませんでした。うとうとしていたら、いつの間にか到着していたという感じ。これならちょっとそこまでという感覚で来ることもできるかもしれません。
初公開!これが市場探検の舞台裏
巨済島に到着して、まずは第1の目的である市場探検に出かけました。市場での詳しい話は市場探検の記事に書いたのでここでは省略しますが、その代わりに市場探検の舞台裏を少しだけ紹介してみようかと思います。K・F・Cの市場探検はなんといってもおばちゃんたちとの雑談が基本。その場にしゃがみこんで、おばちゃんたちと話し込みつつ情報を拾っていきます。あれはなんだ、これはなんだと質問をしたり、珍しい食材があったら写真を撮らせてもらったり。もちろんお仕事の邪魔にならないように気を配りながらなのですが、みなさん親切に色々と教えてくれます。たまーに、味見をさせて頂いたりというラッキーもあったりします。
ケブルにブルブル!!
市場をひと巡りしたところでテレビの担当プロデューサーから「せっかくだから市場で何か食べてもらえないか」という提案が出されました。おおっ、それは局の経費で刺身食べ放題ということですか? うっひゃあ。そいつは大変によい考えですね。そうしましょう。そうしましょう。もうK・F・C、満面の笑顔で大賛成です。
が、ここに大きな落とし穴が潜んでいたのです。出された刺身を見て、ビックリ愕然。こ、こ、こ、こいつはケ、ブ、ル……。

ああ、正直に申しましょう。おいらケブル、大っっっっっっ嫌い。

はい、そうです。K・F・Cは韓国料理の研究家を名乗っております。ちなみにK・F・Cとはコリアン・フード・コラムニストの略であります。韓国料理のうんちくを偉そうに語るK・F・Cですが、その一方で、好き嫌いの多い料理研究家として各方面から顰蹙をかっているのも事実です。特にグロテスクな海産物は苦手が多く、ケブルに至ってはこれまでアウトボクサー並みのフットワークで逃げ回ってきた苦手中の苦手です。
「こ、この状況でケブルが出てくるとは……」

顔面真っ青。心臓バクバク。冷や汗たらりん。今すぐにでも逃げ出したい状況ですが、今回ばかりはそうは問屋がおろしません。なんせテレビカメラが真正面にはりついているのですから、逃げようにも逃げられないのです。これではヘビににらまれたカエルも同然。ああ、ついに年貢の納め時。我敗れたり……。

覚悟を決めてケブルを口に放り込みました。ううう……(以下略)。
巨済島のグルメマスター写楽さん登場!!
なんだかわけのわからないうちにケブルを食べさせられ、呆然としているうちに撮影は終了しました。なにはともあれ、ここからはプライベートタイムです。

巨済島へやってきたもうひとつの目的が友人に会うこと。K・F・Cを迎えてくれたのは、写楽さんという方であります。といっても江戸の世に現れた謎の浮世絵師のことではありません。れっきとした韓国人なのですが、日本の美術史に造詣が深く、特に東洲斎写楽の絵をこよなく愛することから、写楽さんというあだ名になったという一風変った人です。現在は巨済島でワイン関係の仕事をしており、グルメ方面にあふれんばかりの才能を持っている人でもあります。そのグルメぶりを彼の名言から少し紹介すると……。

写楽さん曰 く「済州島に行ったら必ずアワビ粥を食え」
写楽さん曰 く「慶州の皇南パンは温かい牛乳と食べるのが最高である」
写楽さん曰 く「日本料理で1番うまいのはトロロである」

というような感じです。これらの言葉は今も僕の心に深く刻まれています。その写楽さんが案内してくれる巨済島の名店。期待できないはずがありません。

旨さ絢爛、絶品ヒラメに舌が舞う
「何軒かの店で食べたんだけど、ここが1番よかったんだよね」
と写楽さんが連れていってくれたのは、港に面した1軒の刺身専門店。店の前にはいけすが並び、イキのいい魚が泳いでいます。
奥の座敷に通されると、ほどなくして大量の突き出しが運ばれてきました。ここのお店は刺身そのものの味もさることながら、突き出しのレベルが非常に高いことで有名なのだそうです。
実際にずらりと並んだ突き出しを見て確かにびっくり。普通のお店だったら、1品料理として通用しそうなものばかりが目白押しではないですか。ナマコの刺身、ホヤの刺身、茹でたシャコ。いやあ、思わずシャコにかぶりついてしまうほどの驚きでした。
シャコもよかったのですが、もっとよかったのがホヤ。それもただのホヤではありませんでした。韓国語でトルモンゲ、石のホヤと呼ぶそうなのですが、このちょっとかわったホヤが素晴らしい味でした。K・F・Cはケブルが苦手なだけあって、ホヤも得意なほうではないのですが、このトルモンゲだけはまったく別。臭みがなく、果物のように甘く、とろけるようにジューシー。これは本当にホヤの一種なのだろうかと、思わず疑ってしまうほどの味でした。
うむうむ、と突き出しに感動していると、座敷のトビラがガラっと開けられ、いよいよ真打登場であります。お待たせしましたの声とともに出てきたのは、器が透けて見えるヒラメの薄造り。このヒラメがまた泣くほどウマイ。誤解を恐れずに声を大にしていうならば、チャガルチ市場などで食べるヒラメとは雲泥の差であります。月とスッポンであります。カルビとケブルであります。刺身をきゅっきゅっとかみしめるごとに、旨味がじゅわっじゅわっと染み出てくる。いやはや、ここまで旨味の濃いヒラメを食べられるとは思いませんでした。
ちなみにこのヒラメと突き出し、全部合わせて6万ウォン。案内してもらったうえ、ごちそうにまでなってしまいました。写楽さん、本当にありがとうございます。

朝からフグでいいかしら?
刺身でひとしきり飲んだあと、店を変えてもう1度飲み、写楽さんの家にかえってさらに飲みました。夜中まで飲んだおかげで、朝は当然のごとく二日酔いです。でもこの二日酔いこそが写楽さんの計画通りだったのです。

写楽さん曰 く「二日酔いの朝はポックク(フグのスープ)に限る」

ということで、刺身専門店に引き続き、写楽さん行きつけのフグ料理専門店に連れていってもらいました。夜のヒラメから朝のフグへ。ああ、黄金のタスキリレー。こんな贅沢が許されてよいのでしょうか。
ぐつぐつ煮え立った鍋をのぞきこむと、唐辛子色には染まっていない透明感のあるスープ。セリとモヤシがたっぷりと入っており、その間を小ぶりのヒガンフグが群れをなして泳いでいます。ヒガンフグは他のフグに比べるとさほど高級なフグではありませんが、さすがにこれだけ集まるとそのダシの出方がものすごいです。あっさりした味付けの中にも芯の通った旨味があり、二日酔いの疲れた胃に染み渡るようでした。ヒガンフグには小さいながらも白子がくっついていました。こいつを逃してはもったいない。小さな身体から引き剥がすようにして食べると、確かに濃厚な白子の味が口の中に広がります。朝のフグも充分に満足させて頂きました。

巨済島は台風にだって負けないのである!
かくして、1泊2日の巨済島を食べ尽くす旅。前半はケブルに多少苦しめられましたが、後半は写楽さんという最強のナビゲーターを得て、感動の連続でありました。天にものぼるような気持ちで、いざ釜山に帰ろうとすると、最後の最後でなんと大ハプニングが勃発。写楽さん曰く……。

「台風の影響でフェリーが欠航になったってさ」
「げげげ。まじっすか?」

島の最大の弱点は何かアクシデントが起こると、途端に帰れなくなってしまうということにあります。旅行者にとってはこれが大敵。天候によっては何日間も島に閉じ込められてしまうということがありうるのです。

「か、帰れないじゃないですか」

と真っ青になるK・F・C。しかしそれを見て、写楽さん曰く……。

「大丈夫。バスがあるよ」

そうなんです。巨済島は島であるにもかかわらず、大きな橋で本土と結ばれています。少し遠回りにはなりますが、フェリーに乗れなかった場合は、バスでも釜山に戻ることができるのです。そこが巨済島の何よりも便利なところといえましょう。

どうですか、この巨済島という島。交通は便利。おいしいものはたくさんある。自然に恵まれて景色がきれい。そんな巨済島に、行ってみたいと思いませんか? この夏、釜山を訪れる予定のみなさま、ちょっと足を伸ばして巨済島まで行ってみるのはいかがでしょう。天気がよければ日帰りも充分可能。きっとよい思い出になると思います。以上、K・F・Cがお届しました。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2003-07-25

ページTOPへ▲

関連記事

外島(ウェド)

外島(ウェド)

冬のソナタの最終回に出てきた外島へ日帰りで!

その他の記事を見る