東莱パジョン(三巳日)

3月3日はサムジンナル、釜山からは東莱パジョンを王様に献上します!

アンニョンハセヨ、プサンナビです。カレンダーをみると今日(2005年4月11日)は陰暦の3月3日。韓国ではサムジンナルと呼ばれる節句にあたります。日本ではあまり気にされない陰暦ですが、韓国では正月もお盆(秋夕)も陰暦で祝うため、日本よりもずっと生活に密着しています。自分の誕生日も陰暦で覚えている人が少なくなく、日本の感覚で去年と同じ日にプレゼントをあげたら、「もう、ずいぶん前に過ぎたよ」なんて言われることもしばしば。このあたりの感覚は、なかなか身に着きません。陰暦をもっと身近なものとするために、今日はサムジンナルについて調べてみました。
サムジンナルとは
サムジンナルは陰暦3月3日のこと。三巳日(サムサイル)、重三(チュンサム)とも呼ばれます。日本であれば上巳の節句(桃の節句)として、ひな人形を飾り、甘酒やひなあられを食べる日ですよね。昔の言い伝えでは、気温が徐々に高くなり、南下していたツバメが戻ってきて巣を作り始める日だということです。サムジンナルを象徴するチンダルレ(ツツジ)の花もきれいに咲くころで、春を迎える象徴的な1日と言えそうです。

花で作るサムジンナルの料理
日本ではサクラの花がきれいに咲く季節。韓国もソウルなら汝矣島(ヨイド)、釜山近郊では鎮海(チネ)市のサクラが有名です。そして忘れてはいけないのが、ケナリ(レンギョウ)とチンダルレ(ツツジ)。韓国ではこの2つの花も春を象徴する花として親しまれています。サクラの淡いピンク、ケナリの黄色、チンダルレの濃いピンク。3つの花が韓国の春を色鮮やかに飾ります。
特にチンダルレはサムジンナルに欠かせない花としてあげられています。野山から花を摘んできて、お酒に漬けたり、花をあしらった料理を作ったり。チンダルレの花を漬け込んだお酒は杜鵑酒(トゥギョンジュ)と呼ばれ、特に忠清南道のミョンチョン産のものは文化財指定を受けています。チンダルレの花を上に乗せたファジョンはサムジンナルの代表的料理。漢字で花煎と書き、米粉、または餅粉を練って作った餅に貼り付けて焼いた料理です。サムジンナルに花煎を食べる習慣は高麗時代からあったとされ、朝鮮時代には宮中の女官たちが秘園(王宮の庭園)でツツジを摘み、ファジョンを作ったという話が伝えられています。
せっかくなので街に出てチンダルレのファジョンを探してみたのですが、釜山にはそもそもチンダルレの花がほとんどないそうです。お餅の専門店である西面(ソミョン)のthe餅では、かわりに旬のヨモギとナツメで作ったファジョンを販売していました。ナツメの部分にチンダルレの花を貼り付けると、チンダルレのファジョンになります。
釜山では東莱パジョンの日
釜山を代表する名物料理として知られる東莱パジョンも、サムジンナルとはたいへん深い関係にあります。東莱パジョンが生まれたのは、今をさかのぼること80年ほど前。東莱市場を訪れる買い物客のために、近くでたくさんとれた細ネギを使ってパジョンを作って出したのが始まりだそうです。当時の東莱にはネギ畑がたくさんあり、また釜山は港町なので海からの恵みも豊富。この両者をたくみに合わせて作られたのが東莱のパジョンです。
やがて東莱のパジョンは全国的に名声を得るに至り、毎年サムジンナルには王様にも献上されました。陰暦の3月はちょうど細ネギが旬を迎える季節。ソウルの王様も釜山の味覚に舌鼓を打ったことでしょう。この伝統的な東莱パジョンが食べられるのは、東莱区庁の裏手にある東莱ハルメパジョン。ソウルで食べるパジョンとは一味違う、口当たりのやわらかいパジョンを楽しむことができます。
晩春の味覚タンピョンチェ
サムジンナルに限定される料理ではありませんが、3月の季節料理としてタンピョンチェも紹介しておきましょう。タンピョンチェは宮廷料理や、韓定食の1品としてよく登場する大皿料理のひとつ。緑豆、どんぐりなどの粉をゼリー状に固めたムクを、数種類のナムルと混ぜ合わせて食べる料理です。いつ食べてもあっさりとしておいしい料理ですが、古い文献をひもとくとかつては3月の季節料理として親しまれていたようです。18世紀後半に書かれた『京都雑志』、 1849年に書かれた『東国歳時記』には、さわやかな味で晩春の時食に適しているとの記述があります。
余談ですがこのタンピョンチェという料理。漢字では「蕩平菜」と書き、「蕩平」はどちらにも偏らないという意味を表しています。政治的な対立に揺れた朝鮮時代の朝廷において、争いをいさめる目的で、全体をよく混ぜ合わせて食べるタンピョンチェが使われたことに由来します。どちらかの意見に偏らず、党派の垣根を越え、それぞれのよい部分を混ぜ合わせていこうではないか。タンピョンチェはそんな主張のこもった、平和と融和を象徴する料理です。

領土問題に揺れる今の日本と韓国。互いに主張はあると思いますが、その結果として目指すべきところは平和と融和であって欲しいと思います。両国の間に、今こそタンピョンチェを。以上、プサンナビでした。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2005-04-11

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