【第10回釜山国際映画祭】 熱血PIFFボランティア

華やかなスターばかりに注目があつまりがちの映画祭ですが、実は現場のボランティアがいてこそ機能しているのです。PIFFの屋台骨を支えるボランティアにスポットを当ててみました。

アンニョンハセヨ、デューク松本です。盛況に沸く第10回釜山国際映画祭(略称:PIFF)もいよいよ佳境に入りました。開催中はお客さんをはじめ多くのゲストや映画関係者が韓国の内外から集まり大変な賑わいを見せていますが、その現場を陰で支えているのはとっても元気なボランティア・スタッフたち。

「PIFFボランティア」と呼ばれている彼らは映画祭 の見えるところ見えないところほとんどの現場作業 を担います。総勢約400人、多くは大学生で、そ の名のとおり無償で仕え、PIFFにとってなくてはならない存在なのです。
まさにPIFF成功のカギを握るのは彼らのパワーと言っても過言じゃありません。そしてなんとその中に日本人もいるじゃないですか!てなわけで、ここではそんな熱血PIFFボランティアにスポットを当ててみました。ひょっとしたら、PIFFのウラ話なんて聞けるかも!?
1)藤本幸子さん(21)
(PIFFセンター担当)

釜山大学在学
出身地:愛知
在韓歴:8ヶ月
好きな韓国料理:ソコギグッパ
好きな韓国映画:「チング/友へ」
PIFFの会場のひとつ海雲台、そのビーチ沿いに多くのPIFF関連施設が作られています。その中でもPIFFの中核とも言える「PIFFセンター」は今回なんと水族館「釜山アクアリウム」の中に設置!そこでPIFFボラ ンティアとして奮闘する日本人女性の姿を見かけ、早速話を聞く事にしました。
藤本さんは主に海外から来たゲストのへのIDパスの支給、情報提供を担当しています。なんでも日本にいる頃からやってみたかったPIFFボランティアに釜山留学を機にチャレンジしたそうです。
ゲストといえば俳優や映画監督も含まれます。当然、日本人ゲストのお世話もします。「日本映画は映画祭でもとても人気。先日『ホールドアップ・ダウン』のSABU監督のお世話をした時はとても嬉しかった」

日韓の接客や段取りの違いに戸惑いながら、テキパ キと仕事をこなす藤本さん。ついつい範囲外の仕事 を請け負う事なんてザラ。「現場の対応が日本みた いに均一化されてないので、それが原因でゲストに 迷惑をかけないよう、自前のブレーンもフル稼働さ せて応対しています。先日なんかゲストで来られた ある日本の女優さんにヘア・スタイリストが用意さ れてなかったので、美容院を経営する私の友人のお 母さんに急遽来てもらって髪型をセット、舞台挨拶 に間に合わせました。もちろんお母さんたちはノーギャラで協力して頂きました」
なんでみんな率先してボランティアになりたがるの でしょうか?「韓国は就職難。映画祭に限らずボラ
ンティアの経歴は就職に有利なんです。そして映画 祭は楽しいし、やり甲斐があるし、とっても人気なんですよ」。そう、PIFFボランティアは応募したら誰でもなれるワケではなく、二次審査までを通過し
た選りすぐりのエキスパート集団なのだ。

「私自身、PIFFボランティアに参加して多くを学び ました。いろんな国のゲストや(ボランティアの) 他校の子と知り合えるし、みんなそれぞれ得意分野を持っているので、知らない事を教え合って、お互
いが成長できるんです。楽しい事も辛い事もあるけど、やっぱ何事もやってみなきゃわからないですか
らね。あはは。」

根っからのクラバーな藤本さんは、仕事が終わるとボランティア仲間と一緒にPIFFセンター近くのヒッ
プホップ・クラブに出没するそうです。

2)須藤正子さん(29)
(プリモス海雲台会場担当)

釜山大学在学
出身地:福岡
在韓歴:1年
好きな韓国料理:コムジャンオ
好きな韓国映画:「ディープ・ブルー・ナイト」
ある日、映画祭発行の日刊紙を読んでいたらボランティアで活躍する須藤さんの名前を発見、さっそくお会いしてみることに。

場所は今回からPIFF会場の仲間入りをした「プリモス海雲台」。映画祭期間中は一般ロードショーをすべて打ち切って、映画祭作品の上映に備えてました。
「私は映画祭の上映会場プリモス海雲台で主に劇場案内をしています」PIFF訪問は過去4回。アジア映画大好きな彼女は、なんでも福岡に在住している時に「福岡アジア映画祭」でボランティアをしていたとか。「その中に福岡に在住しながらPIFFボランティアをしている仲間がいたんです。そのひとに触発されて釜山大学に語学留学しています。もちろんその一番の目的はPIFFボランティアに参加することでした」

PIFFは「世界の中の釜山」を実感させてくれるそうです。「とにかく規模が大きい。いろんな国から多くの人が集まり、イベントも盛り沢山で、そのうえ地域に密着している。とても魅力的な映画祭なんです」
日本人も大勢来場されますか?「一般のお客さんで日本人は少ないですね。(釜山は)日本から近いし、もっと来たらいいのに。逆に映画配給会社のバイヤーさんは日本人が圧倒的に多いですよ」

ボランティア仲間と連帯意識が高まるにつれ、毎晩のように朝方まで映画話に花が咲き、最近はちょっと寝不足気味だそう。「楽しかったり、キツかったり、眠かったり...。でもやっぱり楽しいです!」やはり一番つらいのはボランティアで働いていると
「映画が見られない事」だとか。

3)キム・ヒョンソクさん(28)
(プレスセンター担当)
釜慶大学在学
出身地:釜山
好きな韓国料理:テンジャンチゲ(←韓国式みそ汁?)
好きな日本のドラマ:「僕の生きる道」(「GOOD LUCK !!」「やまとなでしこ」)
和食と矢田亜希子が大好き!というキムさんはPIFFセンターがある釜山アクアクアリウムのとなり「観光案内所」に設置された「プレスセンター」で報道関係者への対応に追われてます。プレスセンターはボランティア全員が英語スピーカーだけど、更に日本語や中国語、コンピュータ技術など専門分野の担当者が配属されているそう。キムさんは1年間静岡でワーキングホリデーを経験し、その会話能力を買われ日本語担当者としてスカウトされたとのことです。
「自分の日本語会話能力を試したかったんです。来年卒業するので、PIFFボランティアをするなら今しかないと考えて参加しました」

でもその仕事は楽しい事ばかりではないみたい。「韓国語と英語と日本語で物事を考えるので、忙しい時は頭がごっちゃごっちゃになって、英語圏の人に日本語で話してしまったりして笑われるんです」

また「日本人のみなさんは英語がとても上手なので、あまり日本語を使う機会がないんですよ。せっかく日本語を話したいのに」とも。
日本からのPIFF参加者へ一言「(一般の観客も報道関係者も)せっかくPIFFに来たのならただ映画を見たり取材をするだけでなく、韓国人や他国の人ともっと触れ合って欲しいですね。映画を見た後に一緒にお酒を飲むとかいいでじゃないですか。そうやって国境を超えた映画の輪を広げて欲しいです。それが映画祭です。そういうお手伝いも私たちボランティアにお任せください!」

彼は11月に開催される釜山APECへもボランティア参加するとのこと。
写真:ボランティア仲間のリュウ・ムンジュさん(左)とぺ・ヘジンさん(右)。それぞれ日本語と中国語を担当

いかがでしたか?会場をちょっと散策しただけでも日本人や日本語を話せるPIFFボランティアにすぐにめぐり会えます。なんでも日本人PIFFボランティアは全体で約5名いるそうです。

PIFF ボランティア全体では今回紹介したみなさん同様、大多数は現役の大学生なので20代・ボランティア初体験という人が多いですが、中には毎年参加しているというベテランから、本業と掛け持ちのパートタイム・ボランティア、74歳のおじいさんまで様々な方が参加しています。中にはアメリカ人ボランティアも姿もありました。

実際は甘酸いろいろあるでしょうが、みなさん一生懸命対応してくれて、私自身とっても助けられ、気持ちよくPIFFに参加することができました。あなたも、もしPIFFに参加していてわからない事や困った事があったら躊躇(ちゅうちょ)せず彼らを頼ってみてはいかがでしょうか?そのために彼らはいるのですからね。また来年のPIFFにボランティアとして参加するのもいいかもしれません。きっと、この上ない経験になるでしょう。(応募方法は毎年6月にPIFFホームページ上で発表されます URL:http;//www.piff.org/)

PIFF 閉幕式が終わった翌日にはボランティア全員参加の大打ち上げパーティーが催されるそうで、みなさんはそれを楽しみにしていました。PIFFボランティアのみんな、ホントにありがとう!打ち上げでは美味しいお酒を飲んでくださいね!以上、デューク松本がお送りしました。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2005-10-14

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