第7回釜山国際映画祭を100倍楽しんじゃおう!−7th PUSAN International Film Festival

ついに開幕した釜山国際映画祭。ナビ推薦の韓国映画をピックアップしました。

アンニョンハセヨ、プサンナビです。全世界にアジアの映画を紹介し、新しい監督の発掘し、推薦する「第7回 プサン国際映画祭(7th PUSAN International Film Festival)」が2002年11月14日、いよいよプサン市民会館大講堂で開催されます。今年、上映されるのは58カ国、227作品。その中から韓国の作品を中心に、これは!という9作品を紹介したいと思いま~す。ナビがオススメする映画をチェックしておけば、今年のプサン国際映画祭を100倍楽しめること間違いなし!
「トイレ、どこですか?」 監督/ フルーツ・チャン
現在、アジア映画の主要な流れをもっとも正確に反映する「アジア映画の窓」で上映されるフルーツ・チャン監督の「トイレ、どこですか?」。この映画は韓国が出資した、フィルムを使わないデジタル映画なのだとか。
59回ヴェネチア映画祭アップストリーム招待作でもある「トイレ、どこですか?」は愛する人のために奇跡の妙薬を探し出そうという人たちの物語です。癌の宣告を受けたおばあちゃんのために妙薬を求めてプサンにやってきたドンドン。彼の友だち、トニーもまた胃がんの末期である弟のためにインドに向かいます。ドンドンはプサンの海岸で偶然、刺身屋を経営するキム・センパクに出会って…。遺伝による不治の病で期限つきの人生を生きるチョ。さまざまな理由を抱え、それぞれが何かを求めて旅立っていくのです。
この映画に出演する韓国人俳優チャン・ヒョクは「チャン」「火山高」などに出演して、その演技力が認められている人気俳優さんです(歌手としても活躍)。一方、チョ・インソンは、この作品が初めて映画出演。そんな2人の演技にもナビも大注目です!

「密愛」 監督/ビョン・ヨンジュ
アジア映画の未来を垣間見る「ニューカレンツ」部門に出品された「密愛」は韓国の著名なドキュメンタリー作家であるビョン・ヨンジュ監督の長編デビュー作です。韓国やアジア女性の生き様にカメラを向けてきた監督が今回焦点をあてたのは「既婚女性の実態」。
夫の浮気を知り、絶望に陥る妻。夫は妻をなだめるために田舎の田園住宅に引っ越しますが、その村には生きることにはひどく悲観的な、それでいて魅力的な医者が住んでいました。妻と医者は激しい愛に溺れてしまいます。一見よくありがちな不倫話ですが、「密愛」は、結婚制度に縛られていた女性が、裏切りと新たな愛に直面しながら経験する心理的な動揺と覚醒を、極めて繊細で叙情的に描き出した作品です。
日本を熱くさせた韓国映画「シュリ」に出演した俳優「キム・ユンジン」が、惑いながらも懸命に自分自身を探していく既婚女性として登場します。彼女の相手役「イ・ジョンウォン」は、今回の映画が初出演作品ですが、その間固めてきた実力を考えると期待できると言えるでしょう。
「韓国映画パノラマ」を見逃すな!
これから紹介するのは、「韓国映画パノラマ」で上映される2002年の韓国を代表する作品です。すでに公開された映画もあり、映画祭と一般公開を同時にする作品もあるのですが、どれも何度見ても満足できる映画ばかりです!(※「韓国映画パノラマで」では韓国語に英語の字幕で上映されます。)

「酔画仙」 監督/イム・クォンテク
19世紀末の韓国で天才画家と謳われたチャン・スンオプの生涯を映画化。前作「春香伝」で韓国の伝統音楽「パンソリ」の映像化に成功したイム・クォンテク監督。今回の「酔画仙」では東洋画の美しさを前面に押し出しながら、自由な画風で超越を目指す芸術家の欲望と伝統画風にとらわれる世俗との不和を描きます。登場人物やその感情といった部分は比較的抑えた、ベテラン撮影監督、チョン・イルソンが映し出す流麗な映像美が圧倒的!2002年カンヌ映画祭では監督賞を受賞しました。
「シュリ」では北朝鮮軍の将校を熱演したチェ・ミンシクが「酔画仙」では狂気的な天才画家チャン・スンオプを演じます。「シュリ」同様の熱演にご期待ください!

「血も涙もなく」 監督/リュ・スンワン
元ラウンドガールで歌手志望のスジン、元金庫荒らしで現在タクシー運転手のキョンソン。この2人の女性たちが闘犬場を舞台に繰り広げる大金をめぐった大騒動。激しいアクションが見ものであるこの映画「血も涙もなく」は、インディーズ界の有望監督リュ・スンワンの長編デビュー作です。また、この映画の主役であるチョン・ドヨンは「接続」などで知られる人気女優。彼女が演じるのは、歌手を夢見ながらも灰色の現実にウンザリしているスジン。そんな彼女にもチャンスはやってきます。さぁ、どうなるのかって?それはみなさんが直接確かめてみてくださいね!女性の本格的アクションとスタイリッシュな映像が魅力の「血も涙もなく」お見逃しなく!

「オアシス」 監督/イ・チャンドン
ひき逃げ事件を起こし、刑務所から出てきたばかりの男、ジョンドゥは偶然にも謝罪に訪れた先で重度の脳性麻痺をわずらう女性に出会います。そんな2人の間にもいつしか愛が芽生えるのですが、理解さえ示さず、逆に2人を引き裂こうとする家族たち。2人は一体どうなってしまうのでしょうか?独特なファンタジーで描かれる2人の不器用でひたむきな愛。2002年ベネチア映画祭、監督賞を受賞した痛いくらいせつないラブストーリーです。
主役は、イ・チャンドン監督の前作「ペパーミントキャンディー」にも出演した俳優ソル・ギョングとムン・ソリ。役作りのため6ヶ月間を障害者と共に過ごしたというムン・ソリの迫真の演技は鳥肌ものです!社会的弱者を見る監督の温かいまなざしをこの映画で感じてください。

「公共の敵」 監督/カン・ウソク
ボクサー上がりの無学のカン・チョルジュンは麻薬の密売もためらわない問題刑事。しかしお金目当てで両親を殺害した冷血なファンド・マネージャーの存在が彼の人生を大きく変えることになります。1990年代の韓国の代表的産業映画監督のひとりであるカン・ウソク監督がコメディーの中に社会批判を盛り込む得意のスタイルで作り出したアクション・コメディー「公共の敵」。主役の2人の俳優も徹底的な体作りをして挑んだ迫力の演技にも注目です。カン・チョルジュンを演じるソル・ギョングはこの配役のために、なんと15キロもウェイト・アップしたのだとか。それも怠け者の問題刑事カン・チョルジュンを演じるためというプロ精神には感心させられます。対するファンド・マネージャー役のイ・ソンジェも、凶悪なイメージを強調するため、6ヶ月間毎日ウェイト・トレーニングを続けて体を作り上げたそうですよ。

「ロードムービー」 監督/キム・インシク
株式の暴落で失業しホームレスとなった元証券会社社員のソグォンは、ある日ホームレスのテソクと出会います。同性愛者のテソクはソグォンを愛すようになるのですが、ホームレス生活からの脱皮に没頭するソグォンに対し、その愛を隠し続けます。そして、テソクを愛する1人の女性が加わって3人のあてのない旅が始まるのです。粗雑な映像が荒涼かつ印象的なこの映画は一人の同性愛者の悲しいロマンスを描いただけでなく、愛や自分自身の居場所を求め彷徨う現代人を
も反映した話題作です。
この映画では過激な露出も多く登場しますが、それだけが話題にならないのは、この作品の完成度の高さを物語っているといえるでしょう。韓国映画の新たな挑戦ともいえるこの作品に、乞うご期待!

「復讐するは我にあり」 監督/パク・チャヌク
腎臓を患っている姉の手術費のため、働いていたリュ。移植しようと思った自分の腎臓は不適合、おまけに姉の看病のために仕事を休んで解雇に。さらには臓器密売組織に騙され一文無しになってしまいます。そして無政府主義者の彼女の一言から、ある会社の社長の娘を誘拐することに…。娘が殺されたことを知った社長は犯人を捜し、共犯の男女を殺害し、さらに自分自身は無政府主義者のグループによって殺されてしまいます。「復讐するは我にあり」は労働者、資産家そして知識人に対する固定観念を解体する破格的なストーリー、メロドラマ的な要素を排除したハードボイルドな表現方法が話題になりました。
「共同警備区域JSA」で2000年最高の興行記録を樹立したパク・チャヌク監督が送る
あまり凄惨な復讐劇!それゆえ賛否両論だったこの作品。是非、自分の目で確かめてみてください。

「おばあちゃん家」 監督/イ・ジョンヒャン

山里の一軒家に一人で住んでいる70代のおばあちゃんと、そこに預けられることになった都会育ちの7歳の男の子の心温まる物語です。最初はおばあちゃんをみすぼらしい老婆だと疎ましく思っていたイタズラ少年サンウ。でも次第に2人の間にも微妙な連帯感が芽生えはじめて…。と単純なストーリーではありますが、リアルな情景と素人である出演者たちの少しぎこちない演技がうまく合わさり情緒的な映像に仕上がっています。
1998年の冬、「美術館横の動物園」で注目を浴びたイ・ジャンヒャン監督が4年のブランクを経て送る「おばあちゃん家」。老人と子どもが主演のため、各年代からの反応には期待できないとされていましたが、その予想を大きく上回って2002年の韓国の上半期最高興行成績を収めた作品でもあります。

以上、ナビが独断と偏見で選んだ、ナビ推薦作品です。釜山国際映画祭に訪れる人は是非参考にしてください。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2002-11-14

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