デュークが見た!2008釜山アジア短編映画祭・インタビュー!

祝!ミンソン・エクストリーム・ショート賞受賞、壺見高校(つぼみこうこう)監督・独占インタビュー

今回BASFFに新設された「ミンソン・エクストリーム・ショート賞」の初回受賞者である日本人監督・壺見高校氏(30)に受賞感想やBASFFの印象を聞いてみました。
Q:今回は2作品出品されてますね。よく海外の映画祭には作品を出展されるんですか?
はじめてです。今回、BASFFは別カテゴリーで出品してる『Detective in the peaceful town(平和な街の探偵)』(15分46秒)を出品できる映画祭を探す過程で知ったんです。そると、その中にエクストリームショート部門があることを知ったので、BASFF用に『寂しい夕暮れ』作ってみました。前々から同作のアイデアはあったのですが、短すぎる作品をまともに相手してくれる映画祭はないんじゃないかと思って、今まで創らなかったんです。だから、実作に移すきっかけになったのは、ちゃんとこのようなものが発表できる場があったからこそ、つまりBASFFがあったからこそなんです。
Q:制作のご苦労は?
『寂しい夕暮れ』は神戸にある実家の近くでロケをして、役者もいれて総勢4名で作成しました。苦労した点は、やはり60秒以下に物語を納めることです。この映像はきちんとした物語をもって構成したかったので、短いことに意味があり、かつ物語として効果的に構成するのに苦心しました。
Q:BASFFでの反応はどうでした?
仕事の都合で上映やティーチ・インの際はまだ釜山に到着していなかったんですけど、BASFFに来るとなぜか(後の)受賞作には全く反応がなく、『平和な街の探偵』の方が質問や好意的な意見を多く頂きました。受賞を知った時も担当通訳の女の子と雑談してたんです。どうしてもその人に薦めたい日本の本があって、でもタイトルが思い出せなくて、一生懸命タイトルを思い出そうとしているその瞬間に受賞の連絡を受けました。だからそのときは意味がよく分かっていませんでした(笑)。元々、作品が受賞のするかどうかはあまり意識していませんでした。なによりも上映して頂けるだけでうれしかったので。
Q:でも見事受賞ですよ。おめでとうございます。そして壇上のスピーチでは見事な韓国語で観客の喝采を浴びてましたね。
実は韓国語は全く話せません。日本語でさえあやしいですから(笑)。登壇するのは想像するだけでも緊張するので、通訳の女の子に「絶対ついてきてね。」とお願いしました。ついて来てもらったおかげでちゃんと(?)しゃべることが出来ました。スピーチ内容は<映画祭へ招待して頂けるだけでも感激なのに、その上このような賞まで頂いて言葉もありません。この賞を励みにこれからもがんばっていきたいと思います>というようなことです。受賞を聞いた瞬間、何か映画祭で出会ったスタッフによろこんでもらえることがしたいと思って、「じゃあ、韓国語でスピーチしてみよう!」と思ったんです。スピーチコメントを日本語で考え、通訳の方に韓国語へ訳して頂きました。そのあと、あの一文を丸暗記したのです。通訳の方には大変お世話になりました。予想以上の多くの方達にスピーチを喜んでもらえたので良かったです。
Q:賞金100万ウォンはどのようにお使いになる予定でしょうか?
もちろん次回作の制作ですね。それは仲良くなったボランティアの人たちとも約束したので。本年度は出来れば2本、各15分程度の短編を制作するつもりです。
Q:最後にBASFFに参加された感想とメッセージをお願いします!
金海空港に迎えに来て頂いた方々の第一印象で「これはいい映画祭に違いない」と感じたのですが、それは帰国した今も変わりません。映画祭で出会った全てのスタッフが良い方達で、いい思い出しか残っていないからです。これはお世辞じゃありません。本気です。短い滞在だったので、みんなともっといろんなことを話したかったです。とてもすばらしい出会いが多く、長い期間BASFFに参加できなかったことが本当に悔やまれます。このような素晴らしい映画祭を開催・運営された皆さんに心の底から尊敬の念を表したいと思います。

平林勇審査員に聞きました!
一昨年のBASFFグランプリ受賞作『ドロン』の平林勇監督(35)は今回BASFFの審査員を務められました。最後に、世界を股に架けて活躍する映像作家である同氏が見た2008 BASFFの内情をこっそり聞いてみましょう。
Q:以前グランプリを獲った『ドロン』はその後どうなりました?
世界を駆け巡りました。約30の映画祭を回った中で全部で5つの賞を頂き、うちスペインのグラナダ国際短編映画祭では再びグランプリを獲得しました。
Q:すげえ…。ではBASFF審査員になられた経緯について
映画祭の方からメールがあり、審査員をやってくれないかということでした。選ばれた理由はわかりませんが、BASFFには過去3回上映され、うち1回最高賞をもらってるからでしょう。
Q:審査はいかがでしたか?
事前に日本で全作品を一通り見て、その後、気になった作品はもう一度見たりしました。DVDで見たときの印象と、スクリーンで見たときの印象がかなり違い、いいなと思っていた作品が案外良くなかったりということもありました。自分の中では、「新しさ」だったり「短編性」なんかを審査基準にしました。上位に来る作品は「完成度」や「技術力」が高いのが当たり前で、その上でのそれを意識して審査しました。他の審査員の方は、映画監督や俳優、大学教授などのみなさん韓国の方々なので、通訳を介して審査会に参加しました。審査会ではちゃんと意見を言うタイミングを取ってくれたので、言いたいことを言うことが出来ました。審査員のみなさんもとてもいい人たちで、審査会後にもビールを飲みながら審査について話したりしましたよ。
Q:審査結果について
結構、自分の意志も反映された受賞結果になりました。賞に入るような作品は誰が見ても面白くて完成度も高いので、審査員間での意見の相違はほとんどありませんでした。さらに、ただ完成度だけが高い作品を選ぶのではなく、「可能性」や「将来性」なども考慮されて審査されているので、受賞結果にはとても満足しています。今回、最高賞になったドキュメンタリー作品は完成度や技術力もあるのですが、その作品の<存在意義>が素晴らしいと思いました。作品を見た後もそれで終わらず、考えさせられる作品でしたね。他にも、下位賞に入った「Suicide of the Quadruplets」と「Silencio」という作品は最高賞になってもおかしくないような素晴らしい作品でした。壷見さんの作品にはアイデアがあったので、それが受賞につながったんだと思います。
Q:審査を終えてみていかがですか?
A:どういう作品が賞を獲るのかというのを目の当たりにしてしまったのもあり、今後、(ご自身の)作品制作にも何らかの影響があるような気がしています。やっぱり、総合的に良くできた作品よりも、多少荒くても、突出した何かをみんな求めているんだなあと思いました。
Q:2008 BASFFはいかがでした?
今回、審査員としては初めての参加なのですが、最初から最後まで、映画祭の方々と接触する機会が多く、すごく活気のある映画祭に感じました。会場にいるボランティアの方たちも、みなさん人が通るたびに大きな声で挨拶していたりして、エネルギッシュな映画祭の印象を受けました。今後のBASFFに期待することは、このままの活気をずっと続けてもらいたい事です。あとは、韓国以外の国の作品ももう少し増やしてくれればなあという感じです。
Q:今後BASFFに出品を考えてる日本人作家へメッセージをお願いします!
日本人の作品はレベルが高いので、BASFFでも十分に通用すると思います。あと、日本人の観客よりも作品を楽しむ姿勢が積極的でやさしい目で見てくれるので、笑いたいときには大声で笑ってくれますしリアクションがすごくわかりやすく、すごく勇気づけられます。どんどん出品していただけたらと思います。

その他情報

※画像は平林勇氏、壺見高校氏より提供いただきました。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2008-06-16

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